アレルギーについて
主なアレルギーの病気
Point!
・免疫の異常によって、いろいろな症状がおこります。
私たちの身体には、ウイルスや細菌などの異物が入ってきたときに、これらを攻撃しようとする働きが備わっています。この免疫機能はとても重要なのですが、ときには私たちの体に害を与えないはずの食べ物や花粉に対しても反応してしまう事があります。これが「アレルギー」です。
アレルギーの病気は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなど色々あります。
時代が進むにつれアレルギーの患者様が増えています。その理由として、原因となる物資の増加、食生活の欧米化、抗生剤の使い過ぎ、キレイな環境になりすぎた、ストレス、など言われていますが、ハッキリとした原因は分かっていません。
アレルギーマーチ
アレルギー体質をもつお子さんは、年齢を重ねるにつれ、このような経過をとります。
このように、年齢ととも様々なアレルギーの病気が出現することを、「行進」にちなんで「アレルギーマーチ」と呼びます。このアレルギーの発症や進行を防ぐために、早期に予防、治療をすることがとても大切です。
例えば、アトピー性皮膚炎を発症している場合は、皮膚を炎症がない状態に保つことで、皮膚からダニやハウスダストなどの吸入アレルゲンが侵入するのを防ぎ、喘息やアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎の予防につながる可能性があるとされています。
気管支喘息
Point!
しっかり予防しないと、発作が起きやすくなります。
どんな病気?
気管支喘息は、アレルギーの物質、運動、風邪などの感染症、天候や気圧の変化などにより、空気の通り道である気管支が狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。
気道のリモデリング
喘息を放っておいたり、発作を何回も繰り返すと、気管支が厚く・硬く変形してしまいます。これを気道のリモデリングとよびます。
リモデリングにより次第に壁が厚く、気道が細くなると、気管支喘息発作を起こしやすくなってしまいます。つまり、発作を予防して気管支を厚くしないことが大切なのです。
症状
「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という呼吸音とともに、息苦しさや咳がでます。発作が強いと、肋骨がへこむくらい全身で呼吸し、ぐったりしたり、眠れなくなったり、唇が青くなったりします。
気管支喘息の治療
- 予防:ロイトコリエン拮抗薬、ステロイドの吸入、長時間作用型β2刺激薬、
- 発作:短時間作用型β2刺激薬、ステロイドの内服・注射
などがあります。発作を繰り返したり、予防が困難な方は、吸入器をお買いになることをお勧めします。
アレルギー性鼻炎
Point!
ハウスダストやスギ花粉が原因であれば、根本的な治療ができます
どんな病気?
アレルギー性鼻炎は、ハウスダストやスギなどの花粉が鼻や目の粘膜につくと、ヒスタミンという物質がでて、鼻は鼻汁や鼻づまり、くしゃみ、目は充血やかゆみなどをおこします。
症状
鼻汁は透明でさらっとしており、鼻閉は長期間続き、くしゃみは発作的で連発するのが特徴です。
また目はかゆくなり、充血します。
アレルギー性鼻炎の治療
ヒスタミンを抑える薬が中心になります。内服薬はもちろんですが、症状の強さに合わせて、点鼻薬、点眼薬を併用します。
薬で眠くならないの?
抗ヒスタミン薬の副作用に眠気があります。抗ヒスタミン薬は「第1世代」と「第2世代」があり、「第2世代」は脳への移行が少なく、比較的眠気が起きにくく、こちらのお薬を中心に処方します。また、薬によって強さが違うので、効能と眠気のバランスを考えながら、お薬をお出しします。
舌下免疫療法
Point!
スギ花粉とハウスダストは、根本的な治療ができるようになりました
これまで、アレルギー性鼻炎は、症状が出るたびに薬を飲んで抑えることしかできませんでした。しかし、最近になってダニやハウスダストによる鼻炎、スギ花粉症を根本から治せる治療が開発されました。
治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」というものです。
詳しくはこちら https://www.torii-alg.jp/
良い点
- 80~90%の方に効果があり、約40%の方は症状がでなくなります。残りの40~50%の方も症状が軽くなります。
- 免疫作用を改善させる治療ですので、根治が期待できます。
注意すべき点
- 治療が3-5年間、ほぼ毎日薬を飲み続けなければなりません。
- 10~20%の人には効果がありません
- 極まれにですが、アナフィラキシーなど重大な副作用をおこすことがあります。(そのため、初回は医師の目の前で服用してもらいます。)
食物アレルギー
Point!
完全除去をする前にご相談くださいね
どんな病気?
食べ物に含まれるたんぱく質に免疫が過剰に反応し、さまざまな症状が出現します。アレルギーを起こしやすい物質は年齢によって異なり、下の表のようになっています。
食物アレルギーは、食べてから約2時間以内におこる「即時型アレルギー」が有名です。
症状
- 皮膚症状:蕁麻疹、発赤、かゆみなど
- 消化器症状:下痢、嘔吐など
- 呼吸器症状:咳、喘鳴、呼吸困難など
- 循環器症状:血圧低下、意識障害など
上の1~4症状のうち、2項目があると「アナフィラキシー」という診断になります。
また、激しい血圧の低下によるショック状態、意識レベルの低下を伴うと「アナフィラキシーショック」と呼ばれるようになります。
その他にも以下のような食物アレルギーがあります。
口腔アレルギー症候群
果物や野菜などで口やのどがイガイガします。
食物アレルギーが関与する乳児アトピー性皮膚炎
生後1~3か月頃から湿疹が顔や体に広がってきます。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー
特定の食べ物を食べ、数時間以内に激しい運動をすると出現します。
新生児・乳児消化管アレルギー
生まれてまだ日の浅い赤ちゃんにミルクを飲ませると、吐いたり下痢をします。
食物アレルギーの治療
症状の強さに合わせて、高ヒスタミン薬、ステロイド、アドレナリンを投与します。上記のアナフィラキシーショックのような意識の低下、また呼吸が苦しく顔が青白くなっているようであれば、迷わずに救急車を呼んでください。
食事制限について
ほんの少量の摂取でも強い症状が出る方は完全除去が必要です。しかし、ほんの少量でも食べられるのであれば、完全除去ではなく、少ない量から摂取し、徐々に増やしていきます。最初の量、増やし方については、ひとりひとり違いますので、外来でご指導させてください。
口腔アレルギー症候群
Point!
果物や野菜を食べて、イガイガしたら、避けたほうがいいです
どんな病気?
口腔アレルギー症候群は果物や生の野菜に含まれるアレルギー成分が、口の粘膜に反応するアレルギー反応です。
症状
喉や唇がイガイガしたり、痒くなったり、腫れてきます。まれですが、中にはアナフィラキシーショックを起こすこともあります。
食べずぎらいの中に隠れていることもあります。
花粉症と口腔アレルギー症候群
口腔アレルギー症候群をおこす人の多くは、花粉症にかかっています。なぜなら、花粉のアレルギー成分の形が、果物や野菜のアレルギー成分の形と似ているためです。これを「交差反応」と呼びます。
主な花粉と交差反応性が報告されている果物・野菜は下の図の通りです。
検査
プリックテストという検査で。食物を1mm程度の小さな針で刺し、その針を患者さんに刺して、腫れないかを観察します。小さな針ですので、出血や痛みはほとんどありません。
治療
イガイガの原因となる食物を避けるのが基本です。しかし、口腔アレルギー症候群を起こす果物や生野菜は熱に弱いため、加熱すれば食べられることもあります。
アトピー性皮膚炎
Point!
・皮膚がキレイになってからも、保湿やステロイドは急に止めず、少しずつ減らしていきましょう
どんな病気?
自分の汗やダニ、皮膚にいる細菌などによって、皮膚に炎症が起こる病気をアトピー性皮膚炎とよびます。炎症を繰り返すことにより、皮膚がかゆくなったり、黒くなったり、硬くなったり、バリア機能が壊れたりします。また、掻くことでさらに悪くなる、という悪循環になってしまいます。
症状
かゆいだけの病気ではありません
かゆくなるのは皆さんご存じだと思いますが、実はもっと悪いことも起こるのです。
バリアが壊れてしまった皮膚から食べ物が入ると、食物アレルギーの原因になることが最近分かってきました。食物アレルギーをもっているお子さんは、アトピーの治療を並行して行うことがとても大切です。
また、皮膚からタンパク質が漏れて、体重増加不良・低栄養状態で入院にまでなってしまうお子さんもいます。
無治療や不十分な治療を続け、炎症の期間が長く続いたせいで、色素沈着が起こり、大人になって皮膚が黒くなったり、硬くなったりする方も多くいらっしゃいます。
アトピー性皮膚炎の治療
みなさん、皮膚科や小児科を受診して、処方されたステロイドを塗り、治ったらステロイドをやめて、保湿剤に完全に切り替えたり何も塗らなくなったりして、また悪化し、ステロイドを再開する・・、ということを繰り返していませんか?こうすると
いつまでたっても皮膚はキレイになりきれず、また皮膚へのダメージが蓄積されていきます。
ですので、皮膚がキレイになってからもステロイドは急に止めず、徐々に減らすとよいのです。
こうすると、皮膚はキレイな状態を維持でき、またダメージも蓄積されません。これをプロアクティブ療法(active:皮膚炎がおきる pro:前に)といいます。アトピーが出ないステロイドの量を見極め、徐々にステロイドの回数を減らしていくのです。
私も、治療をしていて圧倒的に治りの早さ、患者さんの満足度の高さを感じます。
塗り薬の量
人差し指第1関節分に薬をだしてみましょう。それを、両手分の広さに塗ってみましょう。それが厚すぎず、薄すぎず、ちょうどいい量になります。
引用元 https://www.maruho.co.jp/medical/check.html
(下敷き)ヒルドイド使用量の目安と製剤一覧 より引用
【Q&A】
Q.ステロイドは悪じゃないの?
A.ステロイドの「飲み薬」はダメです。適切な量、強さのステロイドの「塗り薬」を適切な場所に使えば、全く問題ありません。
Q.ステロイドで色が黒くなる、と聞いたんだけど・・
A.全くのウソです。色が黒くなる原因は、アトピーの炎症によるメラニンという色素の沈着です。アトピーの治療が不十分だと色が黒くなります。ステロイドで炎症を抑えることで、メラニンの放出が少なくなり、色素沈着が少なくなります。
Q.毎日ステロイドを使って大丈夫なの?
A.「強い種類の」ステロイドを何か月も「毎日連続で」使用することは推奨されませんが、プロアクティブ療法のように、間に保湿剤を挟んであげると、長期間ステロイドを塗っても安全です。
またステロイド以外にも、プロトピック、コレクチム(どちらも2歳以上)といった選択肢もあります。
Q.いつまで塗るの?
A.これは体質が改善するまで、としか言えません。しかし体質が改善されたとき、それでまでダメージが蓄積されたかどうかで、その時の皮膚の美しさは違ってきます。
Q.根本的な治療はないの?
A.2021年時点ではまだありませんが、様々な研究が進んでいる最中です。
お願い
アトピービジネスにだまされないで!
マスコミなどにより、ステロイドの塗り薬に関する誤った報道が大規模に行われ、「ステロイドは悪だ」というイメージがついてしまいました。これに便乗し、医学的根拠に乏しいサプリメント、民間療法を高額な値段で売りつけているところがあるようです。これをアトピービジネス、といいます。極々まれに効くこともあるかもしれませんが(一番強いステロイドを混ぜているところもあるようです)、まずは我々医師を頼ってはいただけないでしょうか。